有機栽培で主に使われている堆肥は、「牛ふん」・「豚ぷん」・「鶏ふん」と「馬ふん」です。
では、「馬ふん堆肥」は他の堆肥と何が違うのか?
馬ふんを使用している生産者が少ないので「馬ふん堆肥」のことはあまり知らない方も多いと思いますので、馬ふんと他の堆肥の成分や効果を比較してみます。
肥効の面からいうと、①鶏ふん堆肥、②豚ぷん堆肥、③牛ふん堆肥、④馬ふん堆肥、の順に肥料成分が多く含まれます。その理由は主に、堆肥に含まれる「ふんの量」によるもの。
牧草などを主食とする馬や牛のふんには「植物性有機物」が多く含まれるのに対し、えさにタンパク質や炭水化物が多く含まれる鶏や豚のふんには肥料成分である窒素、リン酸、カリウムなどが多く含まれています。このようなふんの成分の違いや、ふんを混ぜる割合によって肥効は変わってきます。一般的な堆肥のふんの割合は、それぞれ以下のようになっています。
鶏ふん堆肥:植物性有機物がほとんど添加されておらず、ふんのみ
豚ぷん堆肥:ふんの割合が多く、もみ殻やおが粉との割合が7:3
牛ふん堆肥:ふんともみ殻やおが粉の割合が5:5
馬ふん堆肥:1割がふん、9割が落ち葉、稲わら、もみ殻などの植物性有機物
※おおよその割合、製品により割合は異なる
「え? そしたら鶏ふんが一番良いの?」
と思う人もいるかもしれません。
実は土壌改良効果という面でいうと、有機物をえさとして土壌の微生物が活性化されるため、有機物が多い方が効果があります。
つまり、「馬ふん」・「牛ふん」・「豚ぷん」・「鶏ふん」の順に土壌改良材としての効果が高くなります。肥効としては馬ふん堆肥は馬ふんの量そのものが少なく、肥料成分はそれぞれ1%未満ですが、有機物は他の「ふん堆肥」と比較すると段違いに入っています。
堆肥の成分が及ぼす影響
鶏ふんと豚ぷんについては、病気を防ぐためにえさとして与えられていた抗生物質が含まれています。その抗生物質が多剤耐性菌※に土中で変わる可能性があり、それらが植物に移行する可能性もあります。私たち人間がそれらを食すと、いざという時に耐性菌に対して抗生物質が効かなくなる場合があります。(※多くの抗菌薬(抗生剤)がきかなくなった細菌のこと)
豚ぷんは、鶏ふんほどではありませんが抗生物質が含まれているにもかかわらず牛ふんより値段が高いため、使用する人は少ないそうです。
牛に関しては、餌を与える際に塩をなめさせます。
その塩が尿やふんに混ざるのですが、その分、塩分を排出するはたらきを持つカリウムが多く含まれることになります。カリウムの成分が多いと、作物はマグネシウムを吸収できなくなります。牛ふん堆肥は作り手によってカリウムを避けてつくっているところもありますが、ごく一部でありなかなか入手できないそうです。
抗生物質が入っていないサラブレッド堆肥
ドーピングに対して厳しいサラブレッドの馬ふんを使用することで、抗生物質がほとんど使用されていないサラブレッド堆肥。
馬(食肉用を除く)の餌は、ワラを主体にした繊維質が多いので、馬のふんにも繊維質が多く残ります。このため、鶏や豚など他の家畜のふんと異なり、微生物の餌となる炭素源の補給にもなるため、土の中の微生物は活性化され生物相が多様になり、ふかふかの土になります。
馬ふん堆肥はチッソ成分が少ないので、例えばトマト栽培の場合、葉が茂りすぎるのを防ぎます。葉が茂りすぎると、実付きが悪くなったり、風通しが悪くなって病害虫の被害を受けることがあります。馬ふんを用いることで、これらを予防して、収穫量が増えて糖度もアップします。
つらつらと長くなってしまいましたが、
「のかぐら」がサラブレッド堆肥を使う理由が、なんとなくわかっていただけたでしょうか
#できることからひとつづつ
加藤 純
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